INTERVIEW / インタビュー

#07 前島隆造役・村上弘明さんインタビュー

『悪党』というタイトルを聞いて、どんな印象を持ちましたか?

 非常に単刀直入なタイトルだと思います。ただ、10年前、20年前とは“悪党”という意味合いも変わってきていますし、いまの時代、ある意味“死語”なのかもしれないですね。声高らかに「正義のために」ということほど胡散臭いことはないように、悪に対する捉え方も人それぞれだと思うんです。そういった意味で言うと、視聴者のみなさんがこのドラマの悪党をどのように捉えるのか、とても興味深いところでもあります。

台本を読まれた感想は?

 第1話から、登場人物全員がこれからどういう出方をしてくるんだろうという期待感が出ていてすごく面白かったです。その後、ここまででそれぞれのキャラが固まってきている中、どういう人間かまったくわからないのが前島で、彼がどうなっていくのかが、ドラマの成り行きとリンクしていますよね。自分の役で恐縮ですが(笑)。客観的に読んでいても、32年も役者をやっていますから、曲がりなりにも読み込む力もあると思うんですけど(笑)、彼をどういう毛色にもっていくかが、このドラマを面白くする鍵なのかなと思います。これからの興味は、刑事同士の横の繋がりがどういう風になっていくのかというところですね。

演じる上で、特に気をつけていることなどはありますか?

 僕がいままで演じてきたのは、“いい人”と言われる役が多かったので、今回の前島は、これまでの僕とのギャップがすごいと思うんです。僕自身そのイメージを逆手にとって、意識的に嫌らしさも出したりして、遊び心を持って演じたいと思っています。
 監督には、海や川に思いを馳せるシーンを増やして欲しいとお願いしています。彼の原風景というか設定として、父親が船の上で生活する労働者だったという背景があるんです。そういう意味で、海や川に対して望郷の念にかられるシーンがあるといいなと思いまして。僕自身も岩手の陸前高田市というところの出身で、半農半漁の暮らしが嫌で「もうこんなところは嫌だ!早くここから出たい」と思いながら育ったんです。その後、仙台で浪人しているときに多くの映画を観て、この世界に憧れて上京しましたが、ある年齢から田舎のことを思う頻度が多くなってきたんですよね。田舎が嫌で出てきたのに、その田舎が恋しくなって、里帰りする頻度も以前より多くなりました。この思いが反映できることはないかなと思い、4年前からは岩手で年末のラジソン(ラジオ・チャリティー・ミュージックソン)というチャリティーラジオ番組にボランティアで参加しています。
 役者をやっていく上においてもそうですが、自分が生まれ育った故郷や、生い立ちは自分の根っこにある本質で、都会に出てきた後に身につけたことは、衣装みたいなものだと思うんです。昔はシティーボーイに憧れて、「村上さんは都会的な役が多いですね」と言われるのがうれしかったけれど、最近は、自分の根っこを醸し出すようなものが役柄に反映されなければ、やる意味がないのかな?と思うようになってきました。今回もまさにそう。悪党という部分が表に出ていますが、その中でも望郷の念というか、彼がどういう生活をしてきたのかというのを、自分の中でイマジネーションしながら演じるようにしています。

どの作品でもご自身との共通点や、役柄の背景を調べたりされるのですか?

 資料となるものはその都度調べたり、原作を読んだりしますね。でも、歴史ものであっても、語られている歴史が本当かどうかはわからない。むしろ嘘だと思って取りかかった方がいいですよね。やっぱり権力者側からの視点なんですよ。例えば、「太閤記」というのは秀吉が自分のことを良く書かせるために、側近の文筆家が全部チェックしていろいろ脚色して作られたものだと思うんです。「信長公記」もそう。それを元に、その後の作家さんたちがいろいろ想像をめぐらせて書いた作品もたくさんありますが、やっぱりいい人風に書いてありますよね。だけど、そうじゃないかも…といった違う視点から書かれてもいいんじゃないかと。それくらいの表現の自由があってもいいんじゃないかなと思いますね。作品によって、もっとストレートな解釈があったり、真逆の視点からの解釈があったりした方が、観る人に興味を注ぐものができるんじゃないかなと思います。

最後に、今後のみどころと視聴者のみなさんへのメッセージをお願いします

 残り2話は、富樫をはじめとする第四係と前島の関係がどうなっていくのかがメインになると思います。そして、謎の多い前島の素性がどのように明かされていくのか。先ほども言いましたが、悪党というのは、時代や人によって捉え方も視点も違うということを、与えられた中で表現できたらいいなと思っています。最初にプロデューサーの中込さんから「これまでとは違った刑事ドラマをやりたい」と言われて、僕もそれに賛同してこの作品に参加させていただいたので、エンターテイメント的にも、いままでのドラマとは違ったものにしたいですね。そして最終的には、夢を持てるような面白いラストになるんじゃないかなと期待しています!